みかわ ただのりの日記

使用上の注意を正しく守って、個人の感想であり、まあ落ち着こう。 http://xap.hatenablog.com/entry/2015/11/01/211243

ブラック・G襲来

[初出:slashdot.jp 2009/08/02 ブラック・G襲来 | xapの日記 | スラド ]

 

会社の用事から帰宅し、夕飯が出来上がるまでの時間をだらだらと過ごしている最中。ヤツは突然、現れた。

 

いや、「突然」ではない。思い返してみれば、前兆はあった。
二、三日前に妻がこんな事を話していた。

「あのね、あの子が……見たっていうの」

妻は娘を見ながら言っていた。

 

が、この家に越してきてから十余年、家の中でヤツを見ることはなかった。
マンションの最上階ということもあるだろうし、掃除やゴミ出しもマメにしている自負もあってか、俺はその話をハナから信用していなかった。

「この季節だし、どうせ、コガネムシかなんかを見間違えたんだろう?」

 

が、娘の言葉は正しかった。

最初にヤツに気づいたのは、妻だった。
俺と、息子の宿題の話をしているとき。
「明日、時間あるんだから宿題てつだ……」
妻の視線が俺の後方、やや下側に移ったと思った瞬間
「きぃぃぃぃぃぃぃゃやあ゛ぁ゛ぁぁっぁぁ!!!!!!」
突然の怪鳥のような悲鳴に、俺の残り5個しかない肝っ玉の1個が弾け飛んだ。


「う、う、うしろぉーー!!!」
志村か?志村なのか!?とか思いつつ後方を振り返った、そこに、ヤツはいた。

 

ブラック・G

 

見事なまでの黒いヤツが、尋常ではないスピードで扉の影に隠れようとしている姿に、残り4個しかない肝っ玉の1個が涅槃に旅立った。

 

非常時は女性の方が行動は早い。
先ほどのショック状態からは考えられないようなスピードで、妻が新聞紙を手に取り、錬金術師の如き手捌きでペーパーソードを作り上げる。


机を飛び越え、そのまま、日々のテニスで鍛え上げたスマッシュが炸裂するかと思いきや、「はい!コレ!」と、俺の手に得物を握らせた。

「お、俺かよ!?」
と振り返ったときには、既に妻と子供たちはGの攻撃範囲外に非難していた。
なんたる速さか。

 

が、ここは一家の人柱大黒柱たる、俺が行くしかあるまい。
ゆっくりとヤツが姿を隠した扉を開け、すばやく索敵。

いない!?

と思いきや、扉の影の一部がもぞりと動く

「チェストォォォーーー!!!」

とりあえず攻撃時の「オマジナイ」を叫び、ペーパーソードをヤツに叩きつけた。


半分逃げられる事を予想したが、ソードはヤツの体にクリーンヒット。
薄羽と足が飛び散る光景に、残り3個しかない肝っ玉の1個が霧散した。

 

が、これで安心はできない。
Gの生命力を侮った末の惨劇を俺はいくつも知っている。
いつでもトドメを打てるよう、注意深くペーパーソードを持ち上げる。

1秒・・・2秒・・・・3秒

ヤツが動く気配はない。ペーパーソードで突付いてみたが、既に虫の息さえしていない様子だ。

勝った・・・のか?

あまりにあっけない最期だったが、これが戦いというものだろう。

完全に動きを停止したヤツを確認したところで、俺は満面の笑みで愛する家族へ振り向いた。
「・・・パパ、やったよ・・」
サムアップしようとする俺へ、家族からの声がかかる。

 

「ぎゃー!えんがちょー!」
「ちかよんないでぇぇ!」
「さっさとソレ捨てて!床拭いて!手、石鹸で洗って!こっちこないで!」